2017年1月1日のTHE YELLOW MONKEY(COUNTDOWN JAPAN 16/17レポ)
2016年はTHE YELLOW MONKEYを4回観た。
全日異なるセットリストで、今まで聴きたくても聴けなかった楽曲 の大半は聴けたのではないか、という勢いで楽しませてもらった。
イエローモンキーが活動休止した頃、私は中学一年生だった。なの で当時はライブに行っていない。
だけど、テレビの歌番組の中の彼らは、小学生目線でもとても魅力 的だった。チアガールを従えて「LOVE LOVE SHOW」を演奏する姿にはわくわくさせられたし、「楽園」の中 の「一人きりもいいだろう 二人だけもいいだろう 猫も連れていこう」という歌詞がロマンチックで大好きだった。素敵なヒット曲と生きられた時代は幸せだった。
その後、吉井和哉のソロも追ってライブに通っていた。
そして幸運にも、彼らが出演するカウントダウンジャパン最終日の チケットを手にすることが出来た。
深夜1時、紅白出演を終えた彼らがアースステージのトリに登場し た。私はフェスの旨味、 とばかりに10列目センターで待機していた。
1曲目はメカラウロコでも披露された「パンチドランカー」。18年前のアルバム曲を持ってくるなんて、今日は攻めのセットリストなのか。
2曲目は往年のライブ鉄板曲「Spark」。
が、少し吉井さんの様子がおかしい。いつもライブではアレンジし て高音で歌う箇所をCD通りに歌っている。表情も硬い。 曲を終え、会場を煽る肉声が完全に枯れている。サビの後でぶっ倒れるのは相変わらずだし、 アウトロで止まるポイントの、 お決まりの変なポーズは決めていたのだけれど。
3曲目にこちらもヒット曲「太陽が燃えている」の演奏が始まるが 、やはり声が枯れていて、メロディーは都度負担のないアレンジが 加えられる。ソロでも、バンドでも、 いつでも完璧なコンディションで、伸びやかだった。こんな状態の 吉井さんは見たことがない。
12月28日には、直近のツアーからでも演奏されていない曲がたくさん組まれたライブ。
12月30日はレコード大賞に出演。
そして12月31日は初の紅白歌合戦への出演。勿論合間には、紅白のリハーサルも行われている。
スケジュールといい、深夜1時というこの日の時間帯といい、ボーカルへの負担は想像に難くないが、後から聞いたところ、紅白は完璧なステージだったとのことで、もしかすると紅白で全てを出し切ってしまったのかもしれない。紅白出演にあたり、新聞の全面広告で「JAM」の歌詞が掲載されていたのだから、とてつもない気合いだったのだろう。
4曲目に「SUCK OF LIFE」と思わしきイントロが始まるも、即座に吉井さんが他の メンバーに目配せをして、捌けてしまい、演奏もストップした。
一瞬残ったメンバーでやや演奏を繋げようとするも、ゆるやかに停 止。正味30秒ほどで吉井さんがステージに戻ってきた。本当に自 分でも驚いているが、突然声が出なくなってしまったので、 少し待って欲しいと。
残りのメンバーが話し合いをしていたが、 ドラムのアニー氏が様子を見に捌けた。
そのうち、ギターのエマ氏から「ごめんね、 やっぱりちょっと捌けるね。色々活動していると、 こういう日もあるよね。」と、 大人の余裕を感じられる冷静な説明がなされた。
待つ中で、中止を予想する客も少なくなかったと思う。しかし、 早い段階で、 15分後の再開を予定しているとの場内アナウンスが流れた。 かつて年間113本のツアーを一本も飛ばさずに終えたこともあるという、彼らのキャリアを思い出す。
戻ってきて演奏が始まったのは、「SUCK OF LIFE」ではなく「バラ色の日々」 の静かなピアノのイントロだった。 ここでは毎回歌い出しの前にMCが挟まれ、コール& レスポンスにより客が熱唱する。
「本当に申し訳ないんだけど、声が出なくて、 この借りを返したい気持ちもとてもあるし、 僕自身とても驚いています。なので、申し訳ないけど、 皆さんも歌ってくれますか?」
恒例のコール&レスポンスに始まり、全編熱唱した。 歌詞は全部覚えている。傍から見たら気持ち悪いかもしれないけれど、 どうにか私の愛が彼らに伝わったらいいと思った。 ライブを観ていてこんな気持ちになったのは初めてだ。 吉井さんの声は、明らかに捌ける前よりも出ていた。 途中で右耳のイヤモニを外していた。 力になったかどうかはわからないけれど、 きっと歌声は聞いてくれたと信じている。
ここでライブ終了と思っていたが、「LOVE LOVE SHOW」が続けて演奏された。 やはり全編熱唱するオーディエンス。演奏陣も、 しっかり客とコミュニケーションを取ろうとしているのが見てとれ る。ヒーセ氏とエマ氏がいつもより空で歌詞を歌っている。 吉井さんの声がまた枯れてきた。「お身体には気をつけて」 とお茶目なフレーズを歌うその目には悔しさが溢れ出していた。
「暁に果てるまで!悲しき!ASIAN!BOY!!!」といつもの台詞が叫び振り絞られ「悲しきASIAN BOY」 が間髪入れずにスタート。
2サビの後で、いつものように吉井さんがほふく前進をする。
今年初めて生でライブを見て気づいたのだけれど、吉井さんは破天荒に動いているようで、ある程度動きを決めているタイプのシンガーだ。いい意味でかっこ良くエンターテイメントに魅せる術を熟知している。
這いずるようにギリギリの力で進んでいくほふく前進、私はなんてものを見てしまったのだろう。
2017年にはドキュメンタリー映画が公開されるそうだが、今日の映像も含まれるのだろうか。
大合唱と終演後の拍手。ステージに魔物がいるとするならば、誇るべき辛勝だったのではないか。